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見ぬ世の友・藻塩草・翰墨城と、いずれの国宝手鑑にも貼られ、早くから古筆愛好家の間で知られていた足利尊氏筆と伝える新古今集の北山切が、実は巻16〜20については、切断されることなく、冊子本の形で伝わっていた。しかも巻末には、貞和6年(1350)2月14日に書写した旨の奥書があり、これは足利尊氏(1305〜1358)の生存中のことである。そうなると、尊氏というのも、単なる伝承に留まらず、実際、尊氏が書いた可能性も少なくないといえよう。この北山切には、通常の活字本などでは見られない歌も含まれており、新古今集の古写本をして大いに注目すべきものといえる。 |
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