関西大学図書室 電子展示室 伊勢物語 KANSAI UNIVERSITY
伊勢物語(1747年刊) 上巻のページへ 下巻のページへ 解説のページへ
電子展示室トップへ戻る図書館トップへ戻る
 『伊勢物語』は江戸時代の人々に非常に人気がありましたが、その人気にこたえて、百種類を越える絵入り版本が出版されました。初期の絵入り版本は、「嵯峨本伊勢物語」の影響を強く受けていて、図柄も「嵯峨本」のものをそのまま模倣しながら、さまざまな工夫や変化を加えています。その後、元禄年間(1688〜1704)ごろから次第に「嵯峨本」の影響は薄れ、菱川師宣などの手になる、浮世絵風の絵をまじえた版本が作られるようになりました。さらに、江戸時代後期になると、西川裕信・月岡丹下・下河辺拾水などといった絵師が絵を描いた、まったく新しい雰囲気の『伊勢物語』版本が出版されるようになります。ここに展示する「改正伊勢物語」も、そのような新しい雰囲気の絵をともなった版本のひとつです。
 「改正伊勢物語」は、延享4年(1747)に京都の吉野屋藤兵衛から刊行され、同年9月に、江戸の竹川藤兵衛、大坂の柏屋清右衛門を版元に加えて再版されました。挿絵は、浮世絵師・西川祐信の筆になります。西川祐信は、寛文11年(1671)に生まれ、画を狩野永納と土佐光祐に学んだほか、江戸で浮世絵を学んで独自の画風を開きました。「改正伊勢物語」刊行の4年後、宝暦元年(1751)に没しています。
 「嵯峨本伊勢物語」には四十九枚の挿絵が加えられていましたが、「嵯峨本」の影響を脱するとともに、伊勢物語絵入り版本の挿絵の数は、おおむね次第に減少していきました。「改正伊勢物語」の挿絵の数は、わずか十一図にすぎません。さらにまた、「嵯峨本」とは違って、これらの絵は、該当する本文とかなり離れた、まったく無関係な位置に配置されていることが多いのです。絵入り版本としては無神経とも言えますが、これは、絵が、もはや本文とともにながめられるのではなく、それだけで楽しまれるようになったからこそ、許されたと考えられます。この時期の多くの絵入り本では、いくつかの絵は見開きの二面を使って大きく描かれています。絵は、もはや本文の添え物ではなく、独立した存在として楽しまれるようになったのです。
 
 
Copyright (C) 2004 Kansai University. All Rights Reserved.