関西大学図書館電子展示室:八代集の世界 KANSAI UNIVERSITY


古今和歌集
基本情報
下命者:醍醐天皇(885―930)
成立年次:905年頃(諸説あり)
撰者:紀貫之、紀友則、凡河内躬恒、壬生忠岑
収録数:約1,100首
巻数:20巻
序文:仮名、真名
収録された主な歌人:4人の撰者の他に在原業平、素性法師、伊勢など
説明
天皇の名による初めての勅撰和歌集。歌を季節、恋、離別といった内容により、分類し、部立として整然と配列した。この編集の形式が、 後に続く勅撰和歌集に大きな影響を与えている。また、紀貫之による序文、仮名序は歌論として高く評価されてきた。 万葉集に見られた、感情や風景の直接的な表現が避けられ、貴族文化の枠組みの中で、歌材を再構成した類型的な歌を多く含む。 この点に関しては、正岡子規の批判が有名である。表現の面では、縁語・掛詞といった新しい技法が多く見られる。 平安時代から広く読まれたため、貴重な古写本も多数残されている。
古今和歌集 1帖 江戸時代前期写
定家の貞応2年7月本。仮名・真名の両序を備えるが、新編国歌大観本に比して、途中4首の歌を欠く。
他の7つの歌集とともに、木箱に納められている。
中山切 1葉 鎌倉時代初期写
下絵を施した上に、金銀の箔や砂子を撒いた、華麗な装飾料紙に書写された古今集の断簡。筆者を伝えて藤原兼実というが確証はない。およそ鎌倉初期の書写になるもの。もと六半形の冊子本で、古今集仮名序の断簡。切名は中山家伝来によるものか。
みふのたゝみねらにおほせられ
て万□ふしうにいらぬふるき
哥みつからのを□□てまつらし
めたまひてなんそれかなかに
むめをかさすよりはしめて
ほとゝきすをきゝもみちをゝ
りゆきを見るにいたるまて又
つるかめにつけてきみをおも
ひ人をもいはひ秋はき夏草
古今和歌集 1帖 室町時代中期写
貞応2年(1223)7月本。藤原定家が数多く書写した古今集の内、後世最も流布した系統のもので、巻末に「沙弥素徳公所持御本也/端二三行先人被加筆/外題所望之間染禿筆了/十代末世平朝臣」という奥書を持つ。古今伝授で知られる東常縁の書写になるもの。
古今和歌集 2帖 天文5年(1536)写
建保5年(1217)2月本。この建保5年2月本については、これまで定家の明月記に記事が見えるだけで、本文そのものは知られていなかったが、近年出現した該本がこの系統唯一の伝本。朝倉茂入の極札に三井寺時能の筆とあるが、実際、時能の署名入り短冊と比較して、彼の書写したものと認められる。
古今和歌集 2冊 室町時代後期写
嘉禎2年(1236)7月本。今日世に伝わる定家本の大半は貞応2年(1223)7月本であるが、これは珍しく嘉禎2年7月に定家が書写した系統のもの。巻19には、他の諸本にはない躬恒と貫之の贈答歌が見えるが、これは後人の増補であろう。朱筆による古注が随所に書き入れられているのも注意される。
古今和歌集 1帖 享徳2年(1453)写
嘉禎3年(1237)正月本。定家本の中でも珍しい嘉禎3年正月本を享徳2年11月に源兼親が書写したものだが、巻末には、貞応元年11月本・嘉禎3年10月本・嘉禄2年4月本などの校合奥書が見え、貴重である。
古今和歌集 2冊 室町時代後期写
嘉禎3年(1237)正月本。定家本の中では珍しい嘉禎3年正月本の本文に、これまた伝本希な貞応元年(1221)9月本で校合したもの。筆跡は定家の書風を模しているが、筆力はいたって弱く、室町の後期あたりの書写になるもの。