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まず、表紙において書名と著者名が英文であるのにもかかわらず、縦に記述されているのが目に留まる。また、英文であるので当然左開きで読むことになるのだが、裏表紙の左肩には、芦ノ湖にさかさまに映る富士山の絵にかぶさって、“This is the front of Japanese books.”とあり、邦文の本と英文の本との違いを強調する演出がなされている。つまり、日本の本だと、こちらが最初のページであるという洒落である。
表紙と裏表紙の演出や書名からもわかるように、内容は日本の風俗・文化の何もかもが欧州のそれとは異なり、さかさまであるということを示すものであり、著者であるMrs.Pattonがそれらを説明し、時には自分の所感を付け加える。ちりめん本としてはページ数は多くはないが、字がかなり詰められて印刷されており、字数ではかなり大部なものである。 絵師の名前はどこにも記述が見受けられない。全体に俯瞰的な視点で描かれた挿絵が多く、風景画めいて感じられるものが多い。英文の字の流れを意識してか、挿絵のほとんどは、縦の動きではなく、横の動きを感じさせるように描かれており、そこが著者に対する皮肉になっていて面白い、というのはうがちすぎであろうか。 |
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